コラム ◇「付加価値、基本価値」デザインによる2つの価値創造!

(メルマガvol.2より)

デザインマネジメントコラム
◇「付加価値、基本価値」デザインによる2つの価値創造!


本メルマガでは、HDMF役員メンバーが持ち回りで、デザインマネジメント関連の話題をコラム発信します。

今回は、デザインを取り上げたあるネット番組の内容を題材に、「付加価値」を生むデザイン活用と「新しい基本価値」を生むデザイン活用を考えてみたいと思います。

「デザインで変えるものづくり」
http://www.tv-tokyo.co.jp/nms/shincyouryu/post_321.html

この番組では、海外輸出を念頭においた2つのデザイン活用事例を取り上げています。ひとつは、伝統工芸品である南部鉄器。もう一つは、産業機械であるフォークリフト。

前者(鉄器)で語られている「デザイン」は、ヨーロッパのユーザー嗜好や生活スタイルに合わせるため見た目を変えた「視覚的な差異化」のデザイン。キッチン用品としての基本的価値は従来品と同じ。違いは、消費者嗜好にマッチし、購入を喚起する見た目。これは「付加価値を生む」デザインです。

一方、後者(産業機器)で語られているデザインは、製品の使いやすさを革新させるもの。フィンランドのロックラー社が開発したフォークリフトは、指先だけで作業機の操作をするフィンガーチップコントロールを採用。このゲーム機のようなコントローラーが最大の特徴となっています。操作デバイスのあり方を革新させながら、次世代の新しいフォークリフト像を提案し、商品化。これは「新しい基本価値を生み出す」デザインです。

端的に申しますと、前者のデザインは、成熟し日用品と化した商品カテゴリーにおいて、見た目の差異を武器にビジネス効果をねらったデザイン活用。この場合、優れた基本価値が伴わなければ、いずれは飽きられ、新たな取り組みが必要になります。南部鉄で製造したフライパンや鍋などは、調理道具としての基本価値「保温性が高く温度ムラが少なく、おいしく仕上がる」こうした特色があります。あとは、基本価値を活かす付加価値の創出にかかっていると言えます。
後者は、従来の基本価値を革新させ、新ジャンルや新製品像を生み出すデザイン活用。これは、イノベーション(顧客価値の革新)を誘発するデザインです。
もちろん、それぞれのデザイン活用効果には、商品等が置かれている状況により一長一短があります。今日重要視されているのは、デザインがもたらすビジネス効果の全体像を認識した上で、いかに戦略的に活用するかです。

後者のデザイン活用事例のように、製品の開発初期から適切なデザイナーを参画させる。デザイナーは、顧客目線を持った客観的立場として企業内人材と「恊働」し、知の共創を促進させます。こうした取り組みを通じて、「デザイン思考を活用したイノベーション体質」を組織に根付かせる。これからの中小企業においても、こうしたデザイン活用が重要な戦略の一つとなりつつあります。
そのためのノウハウ獲得と情報発信、HDMFにおける重要な役割と思っています。

(HDMF副会長 高橋尚基)

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