山村塾2017「デザイン製品開発クリニック&ワークショップ」報告

去る7月5日、山村先生をお招きした
山村塾2017「デザイン製品開発クリニック&ワークショプ」が
(株)内田洋行北海道支社 ユビキタス協創広場「U-cala(ユーカラ)」
にて開催されました。
今回はHDMF会員であるものづくり企業とデザイナーが
新商品開発に挑んだ具体的な話題とその内容を
さらに理解を深めるワークショップが行われました。

前半は企業側とデザイナー側のパネルディスカッション。
まず、札幌市内で黒板を製作する
(株)札幌教材製作所 上田邦秀社長による
デザインを開発に取り入れた経緯や開発のプロセス、
そして開発製品である円盤型の「ころがる黒板」の
プロモーションムービーが披露されました。

上田社長のお話で印象的な内容としては、

・最初からデザイナーはアイデアや色や形を考えてくれるのかと
思ったらしてくれなかった(笑)。
まずは、何を目指すかという「グランドデザイン」を定めることから始まった。

・そこから教育の未来を考えるきっかけができ、
自社としてどのような提案ができるのかを考えた。

・開発途中に会社として展示会(ビジネスエキスポ)を行ったが、
デザイナーからの提案で取扱商品の展示は極力せず、
黒板の魅力を理解し引き出すような参加体験型の展示方針とした。
その結果、展示会全体の中で一番の集客につながり、
黒板の持つ魅力を再発見することができ自信を持てた。

・当初黒板の商品開発を考えていなかったが
最終的に黒板の魅力を引き出し再発見するなかで
「ころがる黒板」というコンセプトとその試作品づくりに行き着いた。

こういったお話を受けて、支援を行ったデザイナーである
高橋尚基デザイン事務所 高橋尚基、(株)ファシオネ 村上真弓両氏は、

・商品開発においてものを開発する前に、何が価値で、
それを何故つくるのかという認識を漠然させず
はっきりと定めて向かうべきビジョンを共有することが大切。
このため今回は原点にもどって「札幌教材製作所」という言葉から
「教材」「教育」「製作」とはを見つめ直し、それを提供する企業として
何が価値なのかというそもそもの議論からはじめた。

・ものづくり企業は具体的な試作には設計図による検討ではなく、
工場に転がっている簡単な材料でいいので、
実寸の試作品を初期のうちから検討することが大切。
「ころがる黒板」というコンセプトを実現する議論も
原寸モデルができてからスムーズに進みました。

・ものを作るだければ無くどのように魅力を伝えていく計画も重要。
さらに「ころがる黒板」を実際の教育に用いるための
プログラム開発も並行して行っていくことも大切。

といった振り返りやアドバイスがありました。

前半の部の締めくくりには、株式会社コボ 山村真一社長から
中小企業とデザイナーによる商品開発についての講評もいただきました。

・新しい価値を生む商品は、商品の源流に遡って考えることが大切。

・中小企業にとってハードルが何かの認識を捉え
そのハードルを乗り越えること

・中小企業にとって新商品開発は通常業務の中で行うので大変なもの。
9割通常業務、1割型新商品開発業務という割合で良い。
付箋とペンだけでも簡単なアイデア出しがグループでできるので
毎日30分でもいいからの業務の合間にでも取り入れて続けることが大切。

・開発に失敗はない。開発をやめれば即失敗。
どこかでつながることもあるので細々とでも続け、粘ることが失敗しない秘訣。

そして後半は、参加者がグループに別れ前半の内容を踏まえ、
「どこに驚きを感じたか?」「すごいと思った点」
「皆さんの商品開発って今どうですか?」というお題で5,6名の
グループに別れディスカッションが行われました。
各自、自分の言葉で感想や思いを披露し、交換したことで
より理解や気づきをを深めたようでした。

今回は恒例のセミナー後の懇親会も開かれ、
山村先生やパネラーの方々とのデザイン談義も盛り上がったようです。

会場をご提供くださった(株)内田洋行北海道支社様には
この場をお借りして御礼申し上げます。

(HDMF副会長 高橋尚基)