2008年から活動を続けている北海道デザインマネジメントフォーラムですが、
コロナ禍などを経て、発足当初より社会は大きく変化しています。
そこで、多様化・AI社会など、これからの社会でデザインマネジメントはどうなるのか?という
少し先の未来について考えるセミナーを開催いたしました。
当フォーラムのメンターである、株式会社コボの山村真一先生をお迎えし、
前半の講義では山村先生のご経験から、具体的な事例を交えながら
デザインマネジメントの未来についてお話しいただきました。
後半は、当フォーラム役員と山村先生によるトークセッションを行い、
北海道のこれからのデザインマネジメントに対してたくさんのアイデアを頂けました。
この内容は是非多くの方に共有したいと感じましたので、
本記事では、セミナーの模様を詳しくレポートいたします。

2024オープンセミナー「DESIGN MANAGEMENT 2024」
開催日時:2024年12月16日 15:00~17:30(30分押しました)
開催場所:北海道大学FMI国際拠点ディスカッションプラザ
(北海道札幌市北区北21条西11丁目)
プログラム1:ご講演「デザインマネージメントとは!」
【講師】株式会社コボ 山村 真一 氏
デザインが従来の製品デザインにとどまらず、医療、政治、経営など様々な分野に広がり、
その重要性が増していることについてご講演をいただきました。
特に、デザインが持つ「全体を俯瞰し、優先順位付けを行い、細部を深く観察する」という力が、複雑化する社会においてますます重要視されており、デザイナーは専門分野だけでなく様々な分野と接点を増やしていく必要があるというお話がありました。
また、山村先生ご自身の、ギャランやランサーのプロジェクトにおけるチームデザインのお話(※)や半導体検査装置の開発のお話など、具体的な事例を交えながら解説いただき、「良いデザインにはいい仕事の進め方が重要」ということが改めて認識できました。
(※これらの事例は、WEBサイト「三菱カーデザインの軌跡」デザインストーリー「ギャランクーペFTO(1971)」「ランサー(1973)」で詳しく紹介されています。)
質疑応答では参加されたデザイナーの方より、
「いい仕事の進め方をしたいが、クライアントから持ち込まれた課題設定を見直すと時間がかかるしクライアントが良い顔をしない。しかし間違った課題設定で進めるのは良いことではないと思う。山村先生のご経験から意見を聞きたい。」
という質問がありました。
山村先生からは、
- クライアントが表現する言葉は、相手が求めているものとは違う。
- 相手の言ったことより求めているところに行きつくことが大事。これは昔の著名なデザイナー達も同様のことを言っている。
- 仕事は最初に考えた終着点とは全然違うことになる方が多いと考えた方がよい。
- 最初に大きくとらえると可能性が広がり良い結果を生む。
- お互いに呼吸が分かり合うことが理想。
というご回答を頂きました。
プログラム2:クイックセッション「デザインマネジメント×2024」
パネリスト:
株式会社コボ 創設者/顧問 山村 真一 氏
HDMF会長/プリントハウス株式会社 代表取締役 加藤 暢敏 氏
HDMF副会長/高橋尚基デザイン事務所 代表 高橋 尚基 氏
HDMF理事/北海道立総合研究機構 ものづくり支援センター 万城目 聡 氏
ファシリテーター: HDMF事務局 印南 小冬

デザインマネジメント×○○という形で、「×北海道」「×現在の課題」「×デザイン施策」「×未来」
という4つのテーマについて意見交換を行いました。

加藤会長は道内企業の立場から、北海道の企業が直面する厳しい経営環境と、デザインが企業の成長に貢献している現状を挙げられました。
高橋副会長はデザイナーの立場から、デザインの役割が問題解決だけでなくテーマ設定段階から求められるようになってきているため、スキルを増やすように心がけているというお話がありました。
万城目理事は公設試験場の立場から、昔からの北海道のデザイン業界の課題として、グラフィック系が多くプロダクトデザイナーが不足していて、変わっていないと述べられていました。
山村先生からは、デザイナーの仕事分野の広がりと、完成度の高さより未知の世界への挑戦を求められるといった、デザインに対する価値観の変化についてお話しいただきました。
北海道が持つ多様性は強みであると述べられ、様々な分野と接点を設けることが必要であることを強調されていました。
会場からは、北海道は行政も含めてデザインの理解がまだ十分でないことも、デザイナーがデザイン以外の業務を求められる原因では、というご意見がありました。

山村先生からは、企業とデザイナーが密着型で開発を行うためには、最初は行政などのサポートが大事というお話がありました。
また、行政の目をデザインに向けるためには、デザイナーの意見を発信していくことが必要と強調されていました。
そして名古屋の国際デザインセンターを例に挙げられ、アパレルや工芸なども含め広くたくさんの企業が集まった結果、行政への影響力が強いものになったという経験談をお話しいただきました。
また、企業とデザインに取り組むときは案をただ渡すのではなく、企業がものを考えられる力をつけることを大事にしているとのことで、
「企業はピラミッド型で捉えられがちだが、ものづくりはエンドレスのクローズドループ。経営者はデザインを組織として考えると良い」
というキーワードを頂きました。
加藤会長はデザイン導入には経営者の意識改革が必要と述べられ、また高橋副会長からはデザイン導入の初期段階は支援制度によって乗り越えられるものの、継続的な取り組みが難しいという課題提起がありました。
万城目理事からは、そもそも企業は既にデザインを行っていると考え、「導入」ではなく「見直し」という投げかけが良いのではというご意見がありました。

加藤会長からは、デザイナーと企業のマッチング支援を充実させてほしいというご意見がありました。
高橋副会長からは、デザイナー派遣制度ではアイデアの権利関係が担保されておらず、企業がアイデアをもらって終わってしまうことへの問題提起がありました。
万城目理事からは、行政のデザイン職雇用が国などで始まっているので、北海道にも期待したいというコメントがありました。
山村先生からは、行政では補助金など「物ができるか」で判断されソフト面が遅れている部分があり、もっとソフトの部分を強化していくべきだという問題提起がありました。
また、行政の目をデザインに向けるためには、ボトムアップでデザイナーの意見を発信していくことが必要と強調されていました。
会場からはそのお話を受け、北海道デザインセンター構想があるという話題提供がありました。山村先生からはぜひ成功させてほしいと応援をいただきました。
また、名古屋の国際デザインセンター設立時の体験談をお話しいただき、「デザインは非デザイナーからすると、デザイナーが思っているよりも魅力的なものだから、構想図ができれば上の人も興味を持ってくれると思う」というご助言を頂きました。


山村先生は、これからは専門性の高いデザインより広範囲な視点を持ったデザイン活動が求められ、非デザイナーもデザイナーとして参加してくるようになるため、デザイナーはより動きやすくなるだろうと述べられていました。ただしデザイナーは常にスキルアップが必要であるし、デザイナーを支える環境が重要であると強調されました。
また、未来というテーマに対して、「人生はあっという間に過ぎてしまうので、やらなかった後悔をしないように突っ走ってほしい」とまとめていただきました。
高橋副会長からは、デザイナーの役割がどうなるのかという疑問の投げかけがありました。
デザイン制作から戦略的な問題解決能力にシフトしていくのか、それともまた感性的・直感的なものが重宝される可能性もあるのかという問いかけに対して、山村先生からは、「そういう疑問を北海道から発信すると東京からよりもインパクトがあるので、ぜひ北海道からデザイン宣言をしていってほしい」とコメントを頂きました。
加藤会長からは、AIの発展によりデザインマネジメントの要素である課題発見がやりやすくなったり、誰でもデザインに関わることができる面白い世界になってきそうだというご意見がありました。
万城目理事も同様にAIによるデザイン補助の可能性を挙げられて、様々な分野の人が参入してくるようになるため、今デザイナーの人は大変だが全体としては面白い方向に行きそうであると述べられました。
山村先生は、AIによる参入誘発はとても良いが、AIによるデザインはまだ平均値的で、人の心を動かすにはもっと技術の進歩が必要であり、省エネルギー化や心理学的なソフトの導入などもポイントになってくると述べられていました。そして、AIではまだ実現できないデザインのこだわりや物事の深さといったものの魅力を、デザイナーはしっかり伝えていく責任があると強調されていました。
最後に、山村先生から「これからのHDMFに期待すること」についてコメントを頂きました。

「もっと多様な人材を巻き込んで欲しいですね。従来よくある専門家の集まりではなく、北海道の多様性を反映するエッジはどこなのか。HDMFはどれほどの可能性を持っているかというところまで行って欲しい。北海道をデザインするというのはとても興味があります。外から見ていてワクワクしますね。食べ物だとか、水産業や農業だとか、今のHDMF外のものをどんどん取り込んでいってほしい。」
今回のセミナーを通じて、企業・デザイナー・行政どの立場においても多様性を取り込んでいくことが今後重要であることが再認識できました。
山村先生からは、北海道の多様性に期待する激励のお言葉も頂きましたので、今後HDMFでも様々な分野を取り込んだ活動を検討していきたいと思います。
(HDMF事務局)

