第5回HDMFサロン報告

北海道の秋は短いのですが、アート、読書、音楽、味覚、そしてデザインと多方面でいろいろな行事に参加できる季節です。

HDMFサロンも会を重ねて、第5回目。株式会社ファシオネさん事務所を会場に開催されました。

最初のプレゼンターは武藤さん。去る1013日~18日まで、(株)丹青社が開催していた「人づくりプロジェクト展2016 あたらしいケシキ」についてのレポートでした。 

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新入社員研修と言えば、短期間の集合研修の後、実際の職場に配属が決まって、OJT形式で学ぶのが一般的だと思います。今回紹介された丹青社オリジナルの新人研修「ひとづくりプロジェクト」は、2005年から行われている実践型新人研修で、100日程度をかけて数班に分かれて、ものづくりを行うプログラムとのこと。しかも外部のデザイナーや職人などと一緒にものづくりに取り組む本格的な内容で、新人に限らず魅力ある研修だそうです。 

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このような形でものづくりのプロセスを実際に体験することは、教科書的に学ぶ知識では得られない、現場で起こる様々な問題の解決を経験するという点でも、より実践的で役に立つ方法だということでした。 

今回紹介されたいくつかのプロジェクトについて、モノづくりの現場経験の少ない新入社員の意見が、実際にどの程度までデザイナー、職人たちの経験、ものづくりの考え方に影響し、取り入れられたのか?というところは興味あるところです。新入社員や異業種の経験を持つ社員は、専門家の持つ常識や経験にとらわれることのない柔軟な発想があると思うのですが、その発想や考えが採用されたのかどうかは、デザインの素人である私が見た「成果物」からは推測することができませんでした。機会と時間が許されるHDMFのサロンの場を活用して、次回は是非現役デザイナーの方に聞いてみたいと思いました。

 

続いては、HDMF事務局でご活躍されている印南さんが、東京で開催されている「みんなで選ぶグッドデザイン賞」について報告してくれました。

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Gマークの対象はいろいろな分野に及びますが、ひと昔前の感覚ではGマークがついた商品は、「カッコいい」「ほしい」「便利」「役に立つ」というイメージが具体的に湧く「実体あるモノ」でした。一方、紹介された2016年のGマーク認定商品を見ると、アイデアやコンセプトもデザインの概念として重視されて、人の役に立つモノ、使ってたのしいモノ、生活に密着するモノなど、必ずしもモノの外観的な魅力に限らず、その解釈が広がっているように感じました。Gマークが考えるデザインは、一昔前の工業デザインから解釈がかなり拡大しているようです。この辺りはデザインに携わる専門家の皆さんの意見も分かれているよううで、印南さんの紹介する写真からも伝わってきました。

Gマーク選定は、デザイナーなどの専門家と会場を訪れた一般の方の投票によって決定されるようなので、このあたり、見解が一致する商品、別れる商品など興味深い結果になりそうです。

同時に開催されていた「デザインの解剖展」についてのレポートも興味深く面白い展示の紹介でした。私たちになじみのあるお菓子「きのこの山」を使って、パッケージの風景を再現したジオラマや、いろいろなキノコの形で製品化を比較したもの、チョコとクッキーの色を比較したものなど、身近な商品をデザインの視点で真面目に分析しているところが面白いです。

5HDMFサロン、いつものように(?)入口は広く、内容は濃い充実した会となりました。次回もデザインについての新たな発見、興味が発掘されるひと時になることを期待しています。

(HDMF理事 青木善範