第14回サロンレポート

【第14回HDMFサロンレポート】

「3Dツールを使い倒して地方に居ながらプロダクトデザインを楽しむ!」
スピーカー:桝田聡志氏(MASUDA DESIGN代表)

 

去る4月12日(金)、平成最後のHDMFサロンが開催されました。
今回は札幌生まれのプロダクトデザイナー、桝田聡志氏にスピーカーをお願いしました。
参加者は10名、会場はいつもの地下カラオケルームです。

桝田氏は札幌市立高等専門学校(現札幌市立大学)を卒業の後、
有名デザインオフィスや大企業にてプロダクトデザイナー
として在席され、実に様々なご経験をされてきました。
また、母校の札幌市立大学では研究員も務められています。

そんな桝田氏がフリーランスデザイナーとして札幌に戻られたのが2017年。
HDMFのイベントに参加して頂いたことがきっかけで、
数少ない北海道のプロダクトデザイナーに出会うことができました。

現在は、MASUDA DESIGN代表として、東京、札幌のクライアントのために
製品開発・デザインコンサルタント業務を展開されています。

今回は、桝田氏のプロダクトデザイナーとしての多様なご経験と、
札幌に戻られての活動について幅広い内容をお話して頂きました。

まず最初は、ポケモンフォントのタイトルスライド(笑)。
和んだ雰囲気で始まりました。

最初は桝田氏がデザイナーを志す前の話。
もともと大のメカ、SF好きだったということで、
子供の頃からギーガーやシドミードなどの影響を受け描き続けたという
スケッチ、イラストは、プロレベルの本格的なもの!

その後、「絵を描きたかったという」桝田氏は、
札幌市立高等専門学校でインダストリアルデザインを学ばれた後、
自動車メーカーに就職を希望するも残念ながら叶わず、
札幌のデザイン・設計事務所に勤めることに。

ここでは大手メーカー出身のボスに、
製品設計や3次元CADについて徹底的な「スパルタ教育」を受けたそうです。

初就職先でハードな日々を過ごされていた最中、母校の札幌市立大学(当時は高専)
から、文部科学省のIT系プロジェクトの研究員として声がかかり、
「振り返ると今の活動の原点」だと言う、3次元CADや光造形などを活用した
IT機器のプロトタイピングに専念することに。

札幌のような地方で、IT機器の企画・設計・試作まで完結できる環境を
つくりあげるという、15年前の先進的な取り組みとのことで、
スライドには、さまざまなIT機器のアドバンスモデルが並んでいました。

その流れで3次元ツールをさらに極めるのか?と思いきや、
実はその後、東京のトライポッド・デザイン(株)で、全く異なる経験をされています。

「デザインコンサルタントですね。大手企業に製品開発の方向性を提案していました」
リサーチベースのデザイン、特にユニバーサルデザインを得意とする会社で、
「絵はほとんど描かずに、リサーチや資料づくりばかりやっていました」
なるほど、スライドはテキストやグラフが目立ちます。

トライポッドでロジカルにデザイン提案する力を高め、
5年後に富士通デザイン(株)へと転職することになりました。

「ここではまたガラッと変わって、スタイリング提案を沢山やりましたね」
「スマートフォンは殆ど直線や平面で構成されているので、
フリーハンドのスケッチは描かずに、最初から3次元CADでデザインしていました」

スライドには「3次元DCAD使い」として高いスキルを駆使した
スマートフォンの美しいレンダリング画像。
桝田氏は3次元DCADについて、さらに自信を深めましたと言います。

さて、札幌に移られた今、どんな活動をされているのでしょうか?
札幌でもプロダクトデザイナーとして活動することはできるのでしょうか?

 

「試される大地は、甘くなかった」

 

「プロダクトデザインの仕事は待っていても来ません。」

これは「やはり」と言わざるを得ない現状なのでしょう。
製造業、特に自社製品開発を行っている企業が少ない北海道において
デザイナーを活用するような企業はさらに限られるということです。
道内のものづくり企業のグッドデザイン受賞数が少ないことを例に、
そんな状況を分かりやすく説明して頂きました。

桝田氏は多忙なのですが、その仕事の多くは東京時代のネットワークからの
依頼によるもので、本格的なプロダクトデザインの仕事に限れば、
北海道のクライアントはまだ1社とのこと。

一方、地域でデザイナーとして仕事を続けるために、
3Dプリンタを導入し、自宅でラピッドプロトタイピングが行える環境をつくりました。
その結果、ご自身の仕事以外に、道外企業のモックアップ制作依頼も受け始めており、
「ただ3Dプリンタで出力するだけでなく、たとえば表面処理などで高付加価値化する」
ことによって、今後ビジネスに展開できると考えています。


そして、学生時代から27歳で東京に出て36際で札幌に戻るまでに習得した
ものづくり人材としての様々なスキルを一覧にして説明してくれました。
人材が少ない札幌では、こういったスキルを「広く浅く」持っていることが
活躍のポイントと指摘(桝田氏のスキルは決して浅くありませんが・・・)。

さらに、「現在はまだ仕事にはなっていない」と言うものの、
ユニークなオリジナルフィギュアをデザインし、3Dプリンタで実体化したり、
3Dプリンタの特性を活かした実験的な取り組みも進めています。
この辺りはご自身の趣味の領域でもあり、いろいろとトライしてみたいとのこと。
桝田氏が今後どのような活動を展開されるのか、大変楽しみですね。

この後はいつものように、持ち寄ったお酒とおつまみ、
そしていつも場所を提供して頂いている日高理事の奥様からも
オイシ~イ差し入れを頂き、大いに盛り上がりました!

ご参加頂いた皆様、お疲れ様でした。